皮むき作業の行われているその日、素屋根の中で、桜井の作業場で皮ごしらえをしていた一人に出会った。
「今日はどうされたのですか?」
「皮ごしらえと、葺きは同じメンバーがあたります。もう葺きの準備作業が始まっているんです」
そうか。カレンダーは十一月に入っていた。
先入観だったのかもしれないが、伝統的な技術が必要とされる檜皮葺きの作業を担うのは、老齢の職人たちではなかった。確かに専業の職人は全国でも十数人しかいない。しかし、この塔は、ゼロから始めた彼ら作業員の技に支えられながら生まれ変わりつつある。
室生の森で、若い力が輝いているのを知って、頼もしく思えた。